育児・介護休業法、男女雇用機会均等法の改正
2017年2月1日
1.はじめに
育児・介護休業法、男女雇用機会均等法は、雇用保険法等の一部を改正する法律により改正され、平成29年1月1日から施行されています。
この改正法は、労働人口が減少する中で、高齢者や女性等の就業促進及び雇用継続を図るため、これらの者が安心して働き続けられる環境の整備、子育てや介護と仕事の両立がしやすい環境の整備を目的としています。
具体的には、①仕事と育児・介護の両立支援制度と②妊娠・出産・育児休業・介護休業等をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備の2本立てになっています。
そこで、以下では、この改正法の概略について説明していきます。
2.仕事と育児・介護の両立支援制度
- (1)
改正された内容
- ①
有期契約労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和
- →
子の1歳6ヶ月時点(育児休業の場合)又は93日経過日から6ヶ月を経過する日までの間に確実に有期労働契約が終了する場合でない限り、有期契約労働者も育児休業や介護休業を取得することができるようになりました。
- →
- ②
子の看護休暇・介護休暇の半日単位の取得
- →
これまで1日単位でしか取得できなかった子の看護休暇・介護休暇につき、半日(所定労働時間の2分の1)での取得が認められるようになりました。
- →
- ③
介護休業の分割取得
- →
これまで原則1回に限り93日まで取得可能とされてきた介護休業が、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回まで分割して取得することが可能になりました。なお、改正法施行前に、すでに、その対象家族について取得した介護休業日数が93日に達している場合やその対象家族について3回の介護休業を取得している場合には、改正法施行後に新たに介護休業を取得することはできません。
- →
- ④
介護のための選択的措置義務の拡充
- →
これまで介護休業と通算して93日の範囲内で利用可能とされていた選択的措置義務にかかる制度(※)が、介護休業とは別に、利用開始から3年間で少なくとも2回以上利用することが可能となりました。
- (※)選択的措置義務にかかる制度
事業主は、介護に携わる労働者が利用できる制度として、以下のいずれか1つを採用しなければならないとされます。
・短時間勤務
・フレックスタイム制度
・始終業時刻の繰上げ、繰下げ
・介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度
- →
- ⑤
介護の場面での残業免除制度の新設
- →
介護終了までの期間について、所定外労働を免除するよう、労働者が請求できる権利として新たに設けられました。
- →
- ①
- (2)
実務上の対応
上記(1)は、いずれも就業規則(あるいは育児介護休業規程など)で定める内容ですし、新たな制度が設けられたほか、介護休業の分割取得などは、これまでの内容と大きく異なっており、それに合わせた対応も必要となることから、改正法に合わせた規定の改定が必要となります。
3.妊娠・出産・育児休業・介護休業等をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備
(1)改正された内容
事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いのみならず、上司や同僚による妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタニティハラスメントやパタニティハラスメント)が問題となっていることから、これらの行為を防止するために、男女雇用機会均等法において、妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置義務についての規定が追加されたうえ(9条3項)、雇用管理上必要な措置をなすことが事業主に義務づけられました。
具体的には、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(マタハラ指針)が新たに制定されたほか、「子の養育又は家族介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(育児休業等指針)の内容が変更されています。
(2)マタハラ指針の内容
大きく以下の5項目に分けて定められています。その内容は、いわゆるセクハラ指針(事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針)に近いものとなっています。
- ①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- ②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- ③職場における妊娠、出産等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
- ④職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
- ⑤①~④までの措置と併せて講ずべき措置
(3)育児休業等指針の変更内容
上記指針において、「事業主が職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関して、雇用管理上必要な措置を講ずるにあたっての事項」と題する項が設けられ、以下の内容を定めることを事業主に義務づけました。
- ①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- ②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- ③職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
- ④職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
- ⑤①~④までの措置と併せて講ずべき措置
(4)実務上の対応
事業主としては、マタハラ、パタハラを防止するとの方針を明確に打ち出し、上記に即した対応が取れるよう、必要な規定を整備するほか、制度構築を図っていく必要があります。
4.改正による影響
企業としては、優秀な人材を確保し、その流出を防止するためにも、今回の改正法に則した対応をなすことは不可欠といえます。すでに改正法は施行されていますので、これに基づく対応がまだの企業におかれては、速やかに対応する必要があります。
当事務所でも規程類の改定等を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
以上