貸金業法施行令等の改正(企業グループ内での貸付が行いやすくなりました)

弁護士 美和 薫

2014年10月1日

1 これまでの取扱い

 貸金業法第2条第1項本文は、「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介で業として行うもの」を「貸金業」と定めています。この「業として行う」とは、「反復継続し、社会通念上の事業の遂行とみることができる程度のもの」をいいます。
 これまで、ある会社が、子会社や、他の会社と共同出資して設立した合弁会社に対して貸付けを行おうとした場合、一部の例外を除き、「業として行う」ものに該当するとされ、貸金業法の規制を受けました。
 具体的には、貸付けを行う会社は、貸金業の登録を受けなければならないほか(第3条第1項)、貸金業務取扱主任者の設置(第12条の3第1項)、貸付条件等の掲示(第14条)、契約締結前の書面の交付(第16条の2)、契約締結時の書面の交付(第17条)、受取証書の交付(第18条)、貸金業に係る事業報告書の提出(第24条の6の9)等の義務を負うことになりました。
 そのため、グループ会社内で資金調達を図る場合に、当初は貸付けによる資金提供スキームを検討しても、貸金業法の適用が障害となり、その後スキームを変更することは珍しくありませんでした。

2 改正の内容

 貸金業法は、高金利、過剰貸付け、違法取立を行う悪質なサラ金業者を排除し、「貸金業法を営む者の業務の適正な運営の確保」と「資金需要者等の利益の保護」を目的としています(第1条)。
 グループ会社間の貸付け等については、貸金業規制の適用範囲から除外しても、このような貸金業法の趣旨に反するものではありません。
 そこで、今回の貸金業法施行令等の改正(平成26年4月1日施行)では、以下のケースについて、「貸金業」の範囲から除外しました(法第2条第1項第5号、施行令第1条の2第6号、施行規則第1条第1項ないし第5項)。

  1. ①同一の企業グループに属する会社の間で行われる貸付け
  2. ②合弁事業における共同出資者から合弁会社に対して行われる貸付け

 以下、詳しく説明します。

3 グループ内の貸付け(①)について

 同一の企業グループとは、ある会社とその「子会社」の集団をいいます(施行令第1条の2第6号イ)。
 ここでいう「子会社」に該当するか否かは、ある会社が、当該会社について、「財務及び事業の方針の決定を支配している」(施行令第1条の2第6号イ、施行規則第1条第2項)と認められるか否かにより判断されます。

 「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」とは、具体的には以下の場合をいいます。

  1. (1)議決権割合が50%を超えている場合(施行規則第1条第3項第1号)
  2. (2)議決権割合が40%を超え50%未満であり、以下のアないしオのいずれかの要件を充たす場合(施行規則第1条第3項第2号)
    1. ア)自己、子会社、同一内容の議決権行使に同意している者等が所有している議決権の合計数が50%を超えていること(同イ)
    2. イ)自己の役員、使用人等が取締役等に占める割合が50%を超えていること(同ロ)
    3. ウ)自己が重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること(同ハ)
    4. エ)自己が行う融資等(自己と緊密な関係のある者が行う融資等も含む)の資金調達額に対する割合が50%を超えていること(同ニ)
    5. オ)その他自己が財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること(同ホ)

 金融庁は、従前、いわゆるノーアクションレター(法令適用事前確認手続)において、親会社が、総議決権の過半数を有する子会社に対して貸付けを行う場合は貸金業に該当しないという判断を示していました。今回、この例外が明文化され、また、総議決権の過半数を有しない場合であっても、上記(2)の要件を充たす場合の当該会社に対する貸付けは、貸金業に該当しないことになりました。

4 合弁事業における共同出資者から合弁会社への貸付け(②)について

 合弁事業における共同出資者(株主)が合弁会社に対し貸付けを行う場合において、当該会社の「総株主又は総出資者の共同の利益を損なうおそれがないと認められる貸付け」については、貸金業の範囲から除外されました(施行令第1条の2第6号本文)。
 「総株主又は総出資者の共同の利益を損なうおそれがないと認められる貸付け」とは、総株主又は総出資者の同意に基づく貸付けです(施行規則第1条第1項)。具体的には、貸付けを行う都度、個別に総株主又は総出資者の同意を得る場合や、当該貸付けが総株主又は総出資者の共同の意思に基づき実行されるものである旨を株主間契約等に予め盛り込んでいる場合がこれに該当します。
 なお、貸付けを行う出資者が、総株主又は総出資者の議決権の20%以上の議決権を保有している必要があります(施行令第1条の2第6号ロ、施行規則第1条第5項)。

5 今後

 今回の改正によって、グループ会社間において資金融通し合える範囲が拡大し、より機動的かつ効率的に資金を配分・運用することが可能となりました。グループ内におけるキャッシュマネジメントシステムの導入も進むことが予想されます。

以上