(第33回)[商業登記編]
株式会社が法務局の職権で解散させられてしまった場合の対処法

当社は、中央区に本社を置く、設立後15年を経過している株式会社です。
株主1名で、取締役・監査役(以下「役員」といいます。)は親族のみの同族企業です。
現在まで事業を継続していますが、今まで役員に変更がなかったので、設立後、変更登記を一切していませんでした。
東京法務局から、当社宛に「事業を廃止していない旨の届出が無い場合には解散したものとみなす旨の法務大臣の公告がなされた」旨の通知書が届きました。
当社は、事業を継続していますし、今後も継続するつもりですから、解散しては困ります。
この通知に対してはどのような対処・手続が必要でしょうか。

1.休眠会社・みなし解散とは

 会社法上、休眠会社とは、最後に登記(設立後、一切の登記をしていなければ設立後)をしてから12年を経過している株式会社(以下「会社」といいます。)をいいます(会社法472条)。
 一般的に休眠会社とは、長期間企業活動をしていない会社のことを指しますが、会社法では、登記の有無で休眠会社かどうかを形式的に判断します。
 これは、会社の役員の任期が最大で10年(会社法332条、同336条)であるため、どのような規模の会社であっても、少なくとも10年に1回は役員再任の登記をする必要があることと平仄を合わせたものと考えます(同じ人が役員を継続する場合の再任手続については、登記相談Q&A第3回をご参照ください。)。
 なお、この「登記」というのは、役員変更など登記簿の内容を変更する手続のみが該当します。
 したがって、法務局で当該会社の登記簿謄本(登記事項証明書)・印鑑証明書を取得しただけでは、「登記」をしたことにはなりませんので、ご注意ください。

 そして、12年間登記をしなかった場合、休眠会社とみなされ、法務大臣による官報への公告等所定の手続(以下「みなし解散手続」といいます。)が実施された場合には、当該会社は解散されたものとみなされます。これを「みなし解散」といいます。
 通常、みなし解散手続は、12年を経過した会社ごとに個別には実施されず、法務省が一定のサイクルで実施をし、要件に該当する会社について、まとめて処理がなされます。
 前回実施されたのが平成14年12月3日であり、会社法施行後、一度も実施されていませんでした。
 しかし、後述のとおり、みなし解散手続が今年実施されます。

2.みなし解散手続の具体的内容と実施時期

 みなし解散手続は、平成26年11月17日付で、法務大臣による官報公告が行われます。
 公告文は「公告掲載後2ヵ月以内に、まだ事業を廃止していない旨の届出(以下「事業未廃止届出」といいます。)がなく、登記もされないときは、解散したものとみなされる」との内容が予定されています。
 さらに、同日付で、要件を満たす会社の管轄法務局(上記Qの会社は中央区なので東京法務局が管轄です。)から当該会社宛に、上記公告をした旨の通知書(以下「法務局通知書」といいます。)を発送します。
 そして、公告日から2ヵ月以内(具体的には土日等の関係で平成27年1月19日まで)に事業未廃止届出を行わなかった場合には、当該会社に対し、管轄法務局が職権でみなし解散(平成27年1月20日付解散)の登記を行います(法務局の事務処理上、1月20日に対象会社を全社登記することは考え難いので、順次行っていくものと思われます。)。
 本手続の詳細については、法務省のホームページにも掲載されていますので、ご参照ください。
(みなし解散に関する法務省のホームページ)

 なお、法務局通知書が届かなかった場合であっても、公告日から2ヵ月以内に事業未廃止届出を行わない場合には、みなし解散の登記がなされますので、ご注意ください。
 想定される事例としては、管轄法務局に本店移転登記を行っていないものの、実際に営業している本社は別の場所にあるといったような場合です。
 法務局通知書は登記簿上の本店所在地宛に送付され、かつ郵便局の郵便転送期間にも制限がありますから、このような会社には法務局通知書が届かない可能性が高いです。
 官報についても、通常の会社であれば閲覧する機会がほとんどありませんから、法務局通知書が届かなければ、会社の知らないうちにみなし解散の登記がされてしまう可能性がありますので、ご注意ください。

 他方で、本日時点では、法務局通知書を実際に受領した会社はありませんので、上記Qに記載した法務局通知書の内容はあくまで予想ですが、上記Qと類似の文書を平成26年11月17日以降受領した会社は、後述の対処法を実施する必要がありますので、ご注意ください。

3.法務局通知書への対処法

 法務局通知書を受領した会社は、前述のとおり平成27年1月19日までに事業未廃止届出を管轄法務局に提出する必要があります。
 事業未廃止届出を提出すれば、今回のタイミングではみなし解散の登記がなされません。
 具体的には、法務局通知書に「まだ事業を廃止していない」旨などの事項を記載し、会社代表印を押印の上、管轄法務局に提出すれば足ります。郵送での提出も可能ですが、万が一の郵便事故があると提出したことにはなりませんから、面倒でも法務局まで持参することをお勧めします。

 また、事業未廃止届出を提出しただけでは、みなし解散の要件を満たしたままですから、併せて役員再任登記など、会社法上必要とされる変更登記手続を行うべきと考えます。

 他方で、平成27年1月19日までに事業未廃止届出を提出せず、みなし解散の登記がされてしまった場合には、3年以内であれば、株式会社継続の登記(以下「継続登記」といいます。)をすることが可能です。但し、継続登記には別途株式総会の決議が必要となるなど、事業未廃止届出よりも手間と費用がかかりますので、ご注意ください。

 ちなみに、みなし解散の登記がされてしまいますと、継続登記をしない限り、解散会社として事業活動等に支障が出ると考えますので、みなし解散の要件をそもそも満たさないよう、役員再任手続などを所定の期限どおり実施すべきです。
 例えば、極端な例かもしれませんが、取引先から自社の登記簿謄本の提出を求められた際に、みなし解散の登記がされていることに気付かずに取引先に登記簿謄本を提出したとすれば、取引停止となることもあるでしょう。

4.当事務所に依頼することのメリット

 法務局通知書が届いた場合には、速やかに対応する必要があります。
 また、そもそも法務局通知書が届くようなみなし解散の要件に該当しないことが最も重要です。
 みなし解散の要件に該当するような会社では、会社法対応の定款変更(詳細は、登記相談Q&A第13回をご参照ください。)も行っていないことが見込まれます。
 当方であれば、今まで多数の会社の定款の精査や役員変更手続を行い、経験を積んでいますので、正確かつ迅速にアドバイスをすることが可能です。

 定款変更等の変更手続を当方にご依頼された場合は、定款変更案の提案から登記手続まで一括して行いますので、お気軽にご相談ください。

以上