(第30回)[商業登記編]
外国会社が日本支店を設置する場合に注意すべきこと
2013年11月1日
当社は、アメリカに本店を置くアパレル会社ですが、今般、日本支店を設置し、日本でも当社製品を販売することを考えています。
外国会社が日本で継続的に取引を行う場合、その旨の登記をする必要があるとのことですが、具体的にはどのようにすれば宜しいでしょうか。
1.外国会社とは?
外国会社とは、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体で、日本の会社と同種又は類似するもののことです(会社法2条2号)。つまり、アメリカやドイツなど、諸外国の法律に基づいて設立し、諸外国に本店所在地を有する組織のことです。
そして、外国会社が、日本において継続的に取引をする場合には、一定の事項を登記する必要があります。
なお、形式的には外国会社であっても、会社の事業取引を主として日本で行うような会社は、擬似外国会社に該当し、日本で取引をすることが禁止されていますので、ご注意ください(会社法821条1項)。これは、日本法の適用を回避するためだけに外国会社を設立することを規制するためです。
2.日本における代表者のみを設置するパターン
前述した通り、外国会社は、日本における代表者を定め、その旨の登記をしなければ、日本において継続的に取引をすることができません(会社法817条、818条)。登記をせずに継続的に取引を行った場合には、行為者と外国会社が連帯して、取引の相手方に対し、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法818条2項)。
外国会社が日本で継続的取引を行う場合の最も基本的な方法が、「日本における代表者」のみを定め、外国会社の登記をすることです。
日本の顧客に対して店頭販売を行わないで取引するのであれば、日本に営業所(以下「日本支店」といいます。)を設置する必要がありません。そのような場合には、単に日本における取引責任者となる代表者のみを定め、登記すれば足ります。
これは、インターネット取引や携帯電話の普及により、取引内容によっては、必ずしも日本支店を設置することが、外国会社にとって必須ではなくなっているため、日本支店を具体的に設置するか否かは、外国会社の判断に任せているということです。
なお、日本における代表者は、外国人でも可能ですが、少なくとも1人以上は、日本に住所が必要です。
ちなみに、日本において取引を行うものの、諸外国の業務に関する情報収集・宣伝広告・諸外国のための物品購入を行う程度であれば、外国会社としての登記すら不要なケースがありますが、明確な基準が会社法で規定されているわけではないので、原則として外国会社の登記をしておいたほうが無難と考えます。
3.日本支店を設置するパターン
他方で、本事例のように日本において積極的に営業活動(商品の販売等)を行うため、日本支店を設置する場合には、上記2.の登記に加え、営業所設置の旨の登記も併せて行う必要があります。但し、登記手続においては、上記2.の手続とそれほど大きな違いはありません。
なお、日本支店を設置するのではなく、外国会社が出資者(発起人)となり、日本に別法人(以下「日本支社」といいます。)を設立する方法もあります。
通常、日本支店と日本支社のいずれを置くかを検討する場合、課税の差異や諸外国での外為法の規制を鑑みて決定します。
4.宣誓供述書とは?
上記2.及び3.の手続を行う場合、必要に応じて、宣誓供述書を作成する必要があります。
宣誓供述書とは、外国会社の登記事項につき、日本における代表者が宣誓した内容を、諸外国の領事が認証した書面のことです。
通常、諸外国の設立関係書類だけでは、日本での登記内容に適さないことが多く、余分な記載事項も多いため、宣誓供述書を添付して登記申請をすることになります。
宣誓供述書は、日本における代表者が、日本にある諸外国の大使館(本事例の場合は、アメリカ大使館)に赴いて作成します。
但し、インド等国によっては、外務省の証明を得た書面でないと、宣誓供述書に認証をしない場合がありますので、ご注意ください。
5.当事務所に依頼することのメリット
外国会社が日本支店を設置する場合、当該外国会社の本国によって手続が異なり、複雑です。
当方に、外国会社の日本支店設置登記手続を依頼された場合には、登記手続だけでなく、日本語での宣誓供述書の作成も併せて行いますので、お気軽にご相談ください。
以上