(第19回)[商業登記編]
会計監査人設置会社は、毎年再任登記が必要です

当会社は、株式公開を視野に入れ現在その準備中ですが、会計監査人を設置することを検討中です。会計監査人とはどういう機関で、設置するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、会計監査人を設置するためには、具体的にどのような手続が必要ですか。
他方で、会計監査人を設置した以後、特に注意すべき点はありますか。

1.会計監査人とは

 会計監査人は、株式会社の計算書類及びその付属明細書等を監査する機関であり、会計監査報告を作成します(会社法396条、会社法施行規則110条)。
 会計監査人が監査し、問題がないと判断された計算書類については、定時株主総会で承認を得る必要がなく、報告をすれば足ります(会社法439条)。
 平成18年5月1日施行の会社法により、会計監査人を設置した場合には、会計監査人設置会社である旨及び当該会計監査人の名称を登記する必要があります(会社法911条3項19号)。
 この点、旧株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律下では、登記する必要がありませんでした。
 また、会社法上の大会社(最終事業年度に係る貸借対照表上の資本金額5億円以上又は負債額200億円以上の会社)又は委員会設置会社は、会計監査人を置かなくてはなりません(会社法327条5項、同328条)。
 他方で、大会社以外の会社であっても、定款に会計監査人設置会社である旨を定めれば、任意で会計監査人を置くことが可能です。

 会計監査人を置くメリットは、計算書類の正確性を確保し、かつ金融機関等外部に対する信用性をアピールできることです。
 具体的に上場準備を計画しているベンチャー企業などでは、早い段階から上場準備の推進を目的として計算書類の適正さを確保する必要もあるでしょうから、会計監査人設置を検討して宜しいかと考えます。
 但し、会計監査人は監査法人又は公認会計士である必要があります(会社法337条1項)。
 したがって、会計監査人設置に伴うコスト(報酬等)を鑑みて、設置するかどうかを検討する必要がありますので、ご注意ください。

2.会計監査人設置の手続

 大会社になった場合等会計監査人の設置が強制される場合も含めて、会計監査人を設置する場合の一般的な手続は以下の通りです。

  • ①会計監査人設置の定款変更及び会計監査人選任の旨の株主総会決議
  • ②監査契約の締結(会計監査人の就任承諾)
  • ③登記申請

3.会計監査人の再任手続

 会計監査人の任期は、選任後1年内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会が終結する時までです(会社法338条1項)。つまり、定時株主総会毎に任期が満了し、再任手続が必要になります。
 但し、別の監査法人を会計監査人に選任する等現在の会計監査人を再任しない場合を除き、定時株主総会終結時点で現在の会計監査人の再任決議がされたものとみなされます(以下「みなし決議」といいます。会社法338条2項)。
 したがって、再任の場合には、定時株主総会で再任決議をする必要がありません。
 しかし、再任の場合であっても、当該会計監査人の再任登記は必要です。
 そのため、毎年定時株主総会後に、会計監査人の再任登記が必要になりますので、ご注意ください。
 また、会計監査人との監査契約についても、みなし決議の場合に契約を同一内容で更新(又は延長)する旨の定めを当該監査契約書に記載していない限りは、毎年契約を締結する必要があります。

4.有限責任監査法人制度の創設

 平成20年4月に公認会計士法等の一部が改正され(平成20年4月1日施行)、有限責任形態の監査法人制度が創設されました。
 これに伴い、既存の監査法人が有限責任制度を採用する場合、その名称中に「有限責任」を記載しなくてはならず、名称変更する必要があります。
 そのため、自社の会計監査人が有限責任制度を採用して名称変更した場合、会計監査人の名称の変更登記をする必要があります。
 変更登記については、当該会計監査人から申請することはできず、会計監査人を設置している各会社で法務局に申請しなくてはなりませんので、ご注意ください。
 ちなみに、有限責任監査法人の数は、制度創設当初は新日本有限責任監査法人と赤坂有限責任監査法人の2法人だけでしたが、平成24年8月7日現在で17法人が有限責任制度を採用しています。今後も有限責任制度を採用する監査法人は多くなるかと思います。

5.当事務所に依頼することのメリット

 会計監査人を設置している会社は上場会社又は上場直前で株主総会の開催準備が必要な株主数が多い会社であることがほとんどです。
 そのような会社の場合には、招集通知・参考書類の作成等、単に株主総会議事録を作成して登記手続をするだけでなく、株主総会開催のための準備が必要となります。
 当事務所であれば、弁護士が招集通知・参考書類の作成並びに株主総会当日の対応を行い、当方が参考書類記載の議案内容のチェック・株主総会後の議事録の作成・登記手続を行うことが可能ですから、ワンストップサービスを実践しているというメリットがあります。
 本件の事例に限らず、会計監査人の設置・変更並びにそれに伴う株主総会の開催を検討している企業がありましたら、お気軽にご相談ください。
 なお、会計監査人設置及び会計監査人再任の変更登記申請に添付する一般的書類は下記の通りです。

(A)新たに会計監査人を設置する場合

  • (1)株主総会議事録(定款変更及び会計監査人選任)
  • (2)監査契約書等会計監査人の就任承諾書
  • (3)会計監査人の商業登記簿謄本等資格証明書

(B)会計監査人再任の場合

  • (1)定時株主総会議事録(会計監査人の不再任の記載がない)
  • (2)会計監査人の商業登記簿謄本等資格証明書

以上