(第13回)[商業登記編]
会社法対応の定款に変更するには

私は、株式会社を経営しています。平成18年5月1日に会社法が施行されたことにより、定款に規定する事項が変更されたと聞きました。具体的には、どのような事項を定款に規定すべきでしょうか。
また、変更手続は、どのようにすればよろいしいでしょうか。

1.定款自治の拡大

 会社法の施行により、企業の形態に合わせた定款規定を選択できるようになったことに伴い、新設された規定がいくつかあります。
 その中でも、役員及び身内以外の株主がいる又はその予定がある非公開会社(全ての株式に譲渡制限規定のある会社。現在の中小企業やベンチャー企業の9割以上が該当すると思われます。)の場合に、私の今までの経験上、特にお勧めの規定は次のとおりです。

<お勧めの規定>
①「株主に相続又は合併があった場合に、その株式を会社に売り渡すことを請求することができる規定」(会社法174条)
 通常の、株式譲渡制限規定の場合には、相続等の一般承継は制限の対象になりません。
 したがって、この規定を併せて置くことにより、相続等による株式の散逸を防ぐことができます。
②「会社が特定の株主から自己株式を有償取得する場合に、他の株主が自己を売主として追加する請求を排除する規定」(会社法164条)
 これにより、特定の株主から自己株式を取得したい場合に、他の株主の便乗を防ぐことができ、会社としては、余計な出費を抑えることができます。
③「取締役会の開催を省略し、取締役全員の同意書等の提出により、取締役会があったものとみなすことができる規定」(会社法370条)
 これにより、実際に取締役会を開催しなくても、取締役全員の同意(監査役設置会社の場合には、監査役が異議を述べたときを除きます。)があれば、取締役会の決議があったものとすることができます。
 株主総会の場合と違い、定款に規定しなくては本制度を採用することができませんので、定款に置くべきと考えます。

2.用語の変更

 また、会社法施行により、次にあげる例のように定款に規定すべき事項の用語が多々変更されました。

<新旧対象例>
 ①旧「発行する株式の総数」→新「発行可能株式総数」
 ②旧「営業年度」→新「事業年度」
 ③旧「新株の発行」→新「募集株式の発行」
 会社法施行前から存続する株式会社(以下「存続株式会社」といいます。)の定款は、会社法下の定款とみなされるので(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律66条2項)、会社法対応の定款を作成しなければいけないという法律上の規定はありません。
 しかし、上場会社に限らず、銀行で融資等を受ける際など、対外的に定款を開示するときもあるので、予め会社法対応の新定款を準備しておくべきでしょう。

3.定款変更手続

 株式会社が定款を変更する場合、原則として株主総会の特別決議の承認が必要です(会社法466条、309条2項11号)。
 但し、上記1.「お勧めの規定」②の規定を置くには、株主全員の同意が必要なので、ご注意ください(会社法164条2項)。
 また、「株券を発行する旨の定めの廃止」(会社法218条)のように、定款変更の株主総会決議だけでは効力が生じず、効力発生日までに所定の期間を設けた通知や公告をすべきものもありますので、ご注意ください。

4.登記手続

 定款変更をした際、それが登記事項である場合には、変更登記申請が必要になります(会社法911条、同法915条)。
 添付書類は、原則として株主総会議事録を添付すれば足ります。

5.当事務所に依頼することのメリット

 会社法が施行されてから、6年以上が経過しましたが、未だに定款が会社法対応になっていない存続株式会社である中小企業やベンチャー企業が多数見受けられます。
 また、会社法施行直後に定款変更をしたものの、当時は情報も少なかったためか、「役員の責任免除規定」(会社法426条)と「監査役の権限を会計監査に限定する旨の規定」(会社法389条)が両方定められているなど、本来であれば会社法違反となるような規定を置いている会社も散見されます。
 定款は、会社の根本規則ですから、先ほども述べた通り、銀行から融資を受けたり、ベンチャーキャピタルから出資を受ける際などには、必ず提出が求められますので、自社の企業規模や事業形態に合った内容とする必要があり、また最新の法改正に沿ったものとすべきでしょう。
 未だ会社法対応の定款にしていない会社はもちろんのこと、形式的には会社法対応の定款にしている会社であっても、定期的な見直しをお勧めします。
 とはいえ、自社にあった定款とするためには何を規定すべきか、またどのような文言で記載すべきであるのかを判断するのは大変な労力ですし、困難です。
 さらには、それが登記申請の必要な事項であるかどうかを判別し、登記申請をするのはより煩雑でしょう。
 当方であれば、今まで多数の会社の定款変更手続を行い、経験を積んでいますので、正確かつ迅速にアドバイスをすることが可能です。
 定款変更手続を私にご依頼された場合は、定款変更案の提案から登記手続まで一括して行いますので、お気軽にご相談ください。

以上