(第11回)[商業登記編]
NPO法人の運営で必ず行うべきこと
2012年4月1日
当法人は、一昨年に設立した東京都が監督官庁のNPO法人です。
NPO法人は、理事や資産の総額を定期的に変更する必要があると聞きましたが、具体的にどのような手続が必要でしょうか。
また、平成24年4月1日付で、NPO法人の制度に改正があったと聞きました。
具体的にはどのような事項の改正があったでしょうか。
1.NPO法人とは
NPO法人とは、特定非営利活動促進法(以下「NPO法」といいます。)に基づき設立する非営利組織で、正式名称は「特定非営利活動法人」といいます。
非営利組織であるため、公益性が要件であり、社員や役員などの構成員に利益配当することができません。また、法人設立するためには、登記申請前に監督官庁で設立認証を受ける必要があります(NPO法第10条)。
2.理事・監事の改選期
NPO法人は、役員として理事3名以上・監事1名以上が必要(定款で下限をこれ以上の人数にした場合はその人数)です(NPO法第15条)。
理事及び監事の任期はいずれも2年内で定款にて定めた期間(NPO法第24条)までであり、株式会社と違い、2年を超える期間に伸張することは原則としてできません。
例外として、2年の任期満了日後、最初の社員総会終結時まで任期を伸張する旨を定款で定めることは可能です(NPO法第24条2項)。
したがって、同じ人が継続して役員を続ける場合にも、社員総会での改選手続及び理事については再任登記手続(監事は登記事項ではありません。)が少なくとも2年に1回必要です。
3.資産の総額の変更
NPO法人では、資産の総額が登記事項です。そして、事業年度末日時点の資産の総額が、前年度から変更している場合には、事業年度末日後2ヶ月以内に変更登記申請する必要があります。
資産の総額は、毎月会員から会費を徴収するだけで変更するので、多くのNPO法人では1年に1回変更登記申請が必要になるでしょう。
なお、資産の総額とは、資産の額から負債の額を差し引いた正味財産の額(株式会社であれば純資産額に相当するもの)です。
4.監督官庁への届出
NPO法人では、理事等を変更した場合、変更登記以外に、監督官庁への変更届出をする必要があります。
これは変更事項の認証の有無にかかわらず必要です。
また、毎年事業報告や役員名簿などを監督官庁に提出する必要があります。
5.NPO法の改正
NPO法人の数は、現在では4万法人を超え、社会に着実に定着してきているところです。こうしたNPO法人のプレゼンスの高まりを背景としながら、NPO法人の財政基盤強化につながる措置等を中心としたNPO法の大幅な改正が行われ、平成24年4月1日付で施行されました。
主な改正内容は、具体的に以下の通りです。
- ①
監督官庁の変更
- 改正前:
- 設置する事務所が1つの都道府県だけの場合には、当該都道府県が監督官庁であり、2つの都道府県以上に事務所を設置する場合には、内閣府が監督官庁でした。
- 改正後:
- 2つ以上の都道府県に事務所を設置した場合でも、主たる事務所の都道府県が監督官庁です。但し、その事務所が政令指定都市区域の場合には、指定都市が監督官庁となります。
- ②
定款変更につき、監督官庁の認証が不要な事項の拡大
- 改正前:
- 監督官庁の変更を伴わない主たる事務所の変更や資産総額の変更など、軽微な事項のみ、認証が不要でした。
- 改正後:
- 改正前から認められていた事項に加え、役員の定数の変更や事業年度の変更などの事項も認証が不要になりました。
- ③
認定NPO法人制度の要件緩和
税制上の優遇措置がある認定NPO法人となるための要件が緩和され、PST基準を免除した仮認定制度が導入されました。
他方で、認定の監督官庁も、国税庁長官から、当該NPO法人の監督官庁である都道府県知事又は指定都市に変更されました。
6.当事務所に依頼することのメリット
NPO法人の登記事項に変更があった場合には、法務局への変更登記手続だけでなく、監督官庁への届出や認証手続が必要になります。また、NPO法人を設立するときも同様です。
したがって、本来は、変更登記は登記の専門家である司法書士に、変更届出・認証は認証等の専門家である行政書士にそれぞれ依頼する必要があります。
しかし、当方であれば、司法書士と行政書士両方の業務を行うことが可能ですから、別々に依頼するなどの迂遠な作業が不要です。
本件の事例に限らず、NPO法人に関して設立等をお考えの方がいましたら、お気軽にご相談ください。
なお、理事変更(全員重任)・資産総額の変更・主たる事務所変更(監督官庁変更なし)の登記申請に添付する一般的書類は下記の通りです。
記
理事変更・資産総額変更・主たる事務所変更
- (1) 定款
- (2) 社員総会議事録
- (3) 理事会議事録
- (4) 理事の就任承諾書
- (5) 財産目録
以上