(第9回)
株式分割を1日で行う方法
2012年2月1日
当社は、外部から出資を受けることを考えており、取引先の何社か候補が見つかりました。
しかし、顧問税理士に相談したところ、当社の1株の価値は、純資産額等に基づいて算定すると約80万円であると考えられます。
そのため、取引先は、引受けてもいいが、1株80万円では高すぎるとのことです。
しかも、取引先の資金繰り上、来週までには決めてほしいと言われました。
どうすれば宜しいでしょうか。
1.株式分割とは?
結論から申し上げますと、今回の場合には、増資前に株式分割を行うべきです。
法律上は、株式分割をせずに、1株の払込金額を、実際の価値よりも大幅に低くして増資する(30万円など)ことも可能ですが、税務面や今後の資本政策を鑑みると、避けるべきです。
株式分割をすると、出資を伴わず、既存の株式を「1株を2株」や「2株を3株」に細分化することができます。
したがって、1株の価値が高すぎる場合に、株式分割による株式の細分化をすれば、1株の価値を下げることができます。
なお、1回の株式分割に法律上の限度枠はありませんので、1株を100株に分割することも可能です。
2.株式分割のスケジュール
株式分割の一般的スケジュールは次のとおりです。
通常の株式会社に最も多い取締役会設置会社の場合、株式分割をするためには、取締役会決議で次のことを定める必要があります(会社法183条2項)。
- ①株式分割の割合(1対2や1対3で分割するなど)
- ②分割割合に基づき増加した株式数を引き受ける権利がある株主の基準日
- ③株式分割の効力発生日
一見すると、取締役会決議だけですることが可能なため、手続的には非常に早くできそうに感じます。
しかし、②の基準日を定める必要があるため、基準日の2週間前までに、官報等会社所定の方法で、その旨を公告しなくてはなりません。(会社法124条3項)。
さらに、官報に公告を掲載するためには、掲載日の1週間前に申し込みする必要があります。
したがって、原則として、株式分割の効力発生まで、最短1ヶ月弱の期間を要します。
3.株式分割を最短1日で行う方法
会社法が施行される前は、上記2記載の期間を短縮することが不可能でした。
しかし、会社法が施行された現在は、株主が役員だけの場合など、株主数が少ない会社であれば、最短1日で株式分割をすることが可能です。
その方法は、次のとおりです。
- ①株主総会で定款変更決議(株式分割の基準日の定めを設定)
- ②取締役会で株式分割決議
*①と②を同じ日に行います。
基準日は、定款に別段の定めがある場合、公告する必要がありません(会社法124条3項但書)。
ですが、多くの株式会社の定款には、定時株主総会における基準日の定めを除き、
「必要があるときは、取締役会の決議によりあらかじめ公告して基準日を定めること
ができる。」と規定されています。
したがって、このままでは、基準日を定めた場合には、前述のとおり公告をしなく
てはなりません。
それを回避するために、株式分割の取締役会決議と同じ日に、株主総会を行い(順番的には、株主総会が先になります。)、株式分割に関する基準日を具体的に定める定款変更をすれば、基準日公告を別途行う必要がなくなります。
株主総会の招集手続は、株主全員の同意が得られれば、省略することができるため(会社法300条)、この方法によれば、最短1日で株式分割の効力を発生させることができます。
4.当事務所に依頼することのメリット
上記のとおり、最短1日で株式分割が可能になるとはいえ、手続に慣れていないと対応が困難かと思います。当方であれば、これまで何度も上記手法による株式分割を行っていますので、早急な株式分割を検討されている企業がありましたらお気軽にご相談ください。上記手続を当方にご依頼された場合は、各議事録の作成から登記手続まで一括して行います。
なお、本件での株式分割登記申請に添付する書類は下記のとおりです。
記
株式分割登記
- (1) 取締役会議事録
- (2) 基準日の定めをした定款
以上