(第4回)[不動産登記編]
売主が登記手続に協力してくれない場合には?

私は、先日、Aより建物及びその底地を購入致しました。既にAには売買代金を支払い、私もその家に住み始めているのですが、Aは権利証が見当たらないなどと理由をつけて、なかなか私名義にする登記手続に協力してくれません。このままでは不安なのですが、私一人で登記申請をする方法はないでしょうか?

1.判決による登記とは?

 不動産登記申請は、登記簿上形式的に直接不利益を受ける者(登記義務者)と直接利益を受ける者(登記権利者)の共同で申請することが必要なので(不動産登記法60条)、原則として、あなた一人で登記申請することは出来ません。
 しかし、登記義務者が登記申請に協力しなくては、いつまでも登記権利者が自分名義に移転登記することが出来ないのでは、登記権利者にとって不都合です。
 そこで、登記権利者は、登記義務者の申請意思を擬制するため、登記義務の履行を訴訟によって請求し、その判決書を添付することによって、単独で登記申請することが認められています(以下「判決による登記」といいます。不動産登記法63条)。

2.本件のケースにおける具体的な対応

 例えば今回のケースでは、「Aは、あなたに対し、別紙物件目録記載の不動産について、平成23年○○月○○日売買を登記原因とする所有権移転登記手続をせよ」との判決を求めます。この判決が確定したら、あなたは確定証明書付判決正本を登記申請書に添付することによって、あなた名義への移転登記をすることが出来るのです。
 また、訴訟は、提起してから確定判決を得るまで、ある程度時間がかかります。その間に、Aが勝手に第三者に建物及び底地(以下「建物等」といいます。)を売却して、登記名義もその第三者に移してしまうことも考えられます。そうすると二重譲渡にあたり、第三者が先に登記を備えてしまっているので、あなたは建物及び底地の所有権を第三者に対抗できなくなってしまう恐れがあります。
 そこで、訴えを提起する前提として、裁判所に対し、建物等の処分禁止の仮処分の申立(以下「仮処分」といいます。)を行うことをお勧めします。仮処分をしておけば、仮に第三者名義に移転登記をされたとしても、あなたが上記の勝訴判決を得た後に、あなた名義への移転登記を申請するのと同時に、仮処分に抵触する第三者の登記を抹消登記申請することが出来ます。
 ここで、注意したいのは、判決による登記及び仮処分の登記がある時の第三者名義の登記の抹消は、勝訴判決を得れば裁判所が職権で登記申請してくれるのではなく、あなたが自分で登記申請する必要があり、登録免許税も通常の登記申請と同様の金額を納める必要があります。

3.登記手続だけでなく訴訟手続も当事務所に依頼することのメリット

 上記2.で記載した通り、判決による登記をする前提として、確定判決を得るための訴訟手続及び状況に応じて仮処分の手続(以下「訴訟手続等」といいます。)を行う必要があります。これらの手続を行う前に第三者に建物等を処分され、名義を移されてしまった場合には、取り戻すのが非常に困難になります。したがって、訴訟手続等は迅速かつ正確に行う必要があります。
 登記手続は司法書士の専門分野ですが、訴訟手続等は弁護士の専門分野です。
 しかし、訴訟手続等においても、登記手続を意識した対応が必要になり、登記に関する知識が必須となりますので、どの弁護士でも迅速かつ正確に対応できるというわけではありません。
 当事務所であれば、不動産分野を専門に扱う弁護士が所属し、かつこのような登記手続の知識が必要な訴訟手続等においては、司法書士である当方も一緒に検討することが可能であり、ワンストップサービスを実践しているというメリットがあります。
 本件のようなケースでお困りの方がいましたら、是非訴訟手続等の段階からお気軽にご相談ください。

 なお、判決による所有権移転登記申請及び第三者名義の登記の抹消登記申請に添付する書類は下記の通りです。

A.判決による所有権移転登記
(1)確定証明書付判決正本(登記原因証明情報)
 *内容が登記手続を求めるものであれば、判決に限られず、「訴訟上の和解」や「調停」等の調書でも構いません。
(2)あなたの住民票
(3)建物及び底地の固定資産評価証明書

B.第三者名義の登記の抹消登記
(1)第三者へ登記が抹消される旨の通知をした書面
 *具体的には、配達証明書付内容証明郵便が該当します。

以上