会社法改正~社外取締役~

1 はじめに

 会社法の改正については従前から多数の議論がなされていたところでありますが、今般、政府は「会社法の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」といいます)を国会に提出し、平成26年4月25日、同法案は衆議院本会議で可決されました。
 いまだ改正法案は参議院本会議での決議は未了の段階ではありますが、この内容での成立の見通しが十分にあり、また、内容としても早期に対応等が必要となってくると思われることから、現時点で紹介させていただきます。
 本稿では、改正法案のうち、社外取締役の選任に関する規律について見ていきたいと思います。併せて、法務省令にて規定される予定の事項についても言及させていただきます。

2 改正法案(社外取締役の選任)の内容

 改正法案においては、議論のあった「社外取締役選任の義務付け」については、今回の改正では見送られることとなりました。
 一方で、事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)であってその発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない会社が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない、といった説明義務が設けられました(改正法案327条の2)。
 また、社外取締役を置いていない会社については、法務省令において、以下のような規定が設けられる予定となっています。

【事業報告について】

  • ・社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告書の記載事項とする
  • ・「社外取締役を置くことが相当でない理由」は、各事業年度における各社の事情に応じて記載しなければならない
  • ・社外監査役が2名以上あることのみをもって「社外取締役を置くことが相当でない理由」とすることはできない

【株主総会参考書類について】

  • ・社外取締役の候補者を含まない取締役の選任議案を提出する際には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならない
  • ・「社外取締役を置くことが相当でない理由」は、各事業年度における各社の事情に応じて記載しなければならない
  • ・社外監査役が2名以上あることのみをもって「社外取締役を置くことが相当でない理由」とすることはできない

3 改正による影響

 上記のとおり、「社外取締役を置くことが相当でない理由」については、定型的な記載を行えば足りるというものではなく、各社の事情に応じた個別具体的な理由を記載することが求められます。この記載方法については、各種の論稿等で方向性等を示すものもありますが、具体的には、そういった論稿等を参考に、各社ごとに、株主に対する説明として必要十分と思われる個別具体的な理由を検討していくほかありません。
 また、今回の改正法案では社外取締役の選任の義務付けまではなされませんでしたが、日本取締役協会の調査によれば、東証1部上場企業のうち社外取締役を選任している企業の割合は平成25年度では62.2%に上ること、東京証券取引所は、有価証券上場規程を改め「上場内国株券の発行者は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない」としたこと(平成26年2月10日施行)、改正法案の附則では、施行後2年を経過した時点で社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときには社外取締役の設置の義務付け等の所要の措置を講じることとされていることなどを踏まえますと、社外取締役選任が推奨され、その方向で大きくは進んでいることは間違いありません。そのため、現時点で社外取締役を選任していない上場企業等においては、上記の説明義務への対応を行いつつ、社外取締役候補者となりうる人材を探す等の対応も検討しなければならないと考えます。
 会社法改正への対応を含め、会社のコーポレート・ガバナンスについてお悩み等がございましたら、是非お気軽にご相談ください。

以上