コンパクト解説 2020年著作権法改正

1 はじめに

 2020年6月に国会で成立した2020年(令和2年)改正著作権法ですが、既に、その大部分は施行されていることをご存じでしょうか。

 近時、著作権法は改正が相次いでおり、最新の改正事項を把握できていない方や、「リーチサイト」「写り込み」というキーワードは把握しているものの、内容を十分認識していない方も多いように思われます。

 そこで、2020年に改正された著作権法を大まかに把握できるよう、今回はできるだけコンパクトに、改正の概要について解説いたします。

2 概要

  まずは、今回の著作権法改正の目次を確認しましょう。

    1.インターネット上の海賊版対策の強化
  •  ①リーチサイト対策
     ②侵害コンテンツのダウンロード違法化
  • 2.その他の改正事項
  • (1)著作物の円滑な利用を図るための措置
     ①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大
     ②行政手続に係る権利制限規定の整備
     ③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入
    (2)著作権の適切な保護を図るための措置
     ④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
     ⑤アクセスコントロールに関する保護の強化
    (3)その他
     ⑥プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)

  上記の通り、今回の改正点には、大きく分けて、「1.インターネット上の海賊版対策の強化」と「2.その他の改正事項」の2つがあります。
  以下、順にみていきましょう。

3 インターネット上の海賊版対策の強化

(1)概要

 「海賊版」の対策を強化する必要があるという点について、異論がある方はいないでしょう。
 ただ、対策を強化するとして、何を行えばよいか、という点にはピンとこない方も多いかと思います。
 まずはこの点をご説明いたします。

 海賊版については、一般に以下のような流れでの利用が想定されます。

 すなわち、海賊版の利用には、❶海賊版サイトへの海賊版のアップロード、❷❸リーチサイトの運営とリンク掲載、そして、❹ユーザーのダウンロードという4つの行為が関連しているところです。
 そのため、4つの行為それぞれを抑制することで、海賊版の利用を効果的に減らすことが可能と考えられます。

 このうち、❶許可のない著作物のアップロードは、改正前も違法です。
 他方で、❷❸のリンク情報を提供する行為やリンクを貼る行為と、❹のダウンロードは、違法とされる範囲が限定的でした。
 そこで、❷❸❹を規制しようとしたのが、今回の改正ということになります。

(2)リーチサイト対策(❷運営、❸リンク掲載)

  • 【規制対象】3
    ●リーチサイトを運営する行為・リーチアプリを提供する行為
    ●リーチサイト・リーチアプリにおいて、侵害コンテンツへのリンクを提供する行為
  • 【規制内容】4
    リンク提供者:民事措置(差止・損害賠償請求)
  • 刑事罰(3年以下の懲役または/および300万円以下の罰金。親告罪)

    サイト運営者:刑事罰(5年以下の懲役または/および500万円以下の罰金。親告罪)

    ※ 侵害コンテンツへのリンク提供等を認識しつつ放置する等した場合、
      個々のリンク提供について民事責任を負う(差止請求可能)

    アプリ提供者:同上

 ポイントは、これまでにはなかったリーチサイトという概念を設け、その提供や、リーチサイトにリンクを提供する行為が、規制対象となったという点です。
 なお、プラットフォーム・サービス提供者は基本的に今回の規制は及びませんが、削除要請を正当理由なく相当期間放置する等、悪質な場合には対象となります。

(3)侵害コンテンツのダウンロード違法化(❹ダウンロード)

文化庁説明資料5より

 ダウンロード違法化については、文化庁の説明資料がまとまっていますので、引用しております。
 ポイントは以下の通りです。

  •  ・

    違法アップロードされた著作物のダウンロードは私的使用であっても違法となりました(従来は音楽・映像のみ違法)。

  •  ・

    音楽・映像以外の違法ダウンロードについては、国民の情報収集等を過度に萎縮させないよう、上記除外①から③の場合は規制の対象外とされています6

  •  ・

    刑事罰については、正規版が有償で提供されており、かつ、反復・継続してダウンロードを行うことが要件とされています。

(4)留意点

  海賊版対策の強化について、皆さんが直接関係することは少ないと思われますが、ご留意いただきたい点は以下の通りです。

  •  ・

    リンクを提供する際に、提供先がリーチサイトに該当しないかについては、ご留意いただいた方がよいでしょう。

  •  ・

    著作権法改正により、リーチサイトや違法ダウンロードへの目がますます厳しくなっております。自社の社員が、リーチサイトを使用していたことや、違法ダウンロードを行ったことが公になりますと、炎上しかねませんのでご留意ください。例えば、企業が、スマートフォンやPCの画面を直接映してWEB配信を行うことも増えておりますが、その際に、検索履歴やブックマークにリーチサイトがあり、発覚することもあり得るところです7

4 その他の改正事項

(1)概要

  • ●著作物の円滑な利用を図るための措置
      ①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大8
    •    →

      スクリーンショットやインターネットによる生配信などを行う際の写り込みも幅広く認めるように改正(改正前は写真撮影・録音・録画のみ)

      ②行政手続に係る権利制限規定の整備9
    •    →

      地理的表示法に基づく地理的表示の登録、種苗法に基づく品種登録においても、特許審査と同様、文献等の複製ができるように改正

      ③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入10
    •    →

      著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利に関し、著作権譲渡の場合の譲受人などに対しても対抗できる仕組みを導入

  • ●著作権の適切な保護を図るための措置
      ④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
    •    →

      侵害者が保有する証拠を権利者に提出させる手続きに関し、裁判所が予め証拠書類を閲覧して判断できるようにするとともに、専門委員のサポートも受けられるように改正

      ⑤アクセスコントロールに関する保護の強化
    •    →

      ライセンス認証を不正に回避する行為にも適切に対応できるよう改正

  • ●その他
      ⑥プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)
    •    →

      訴訟等での立証の円滑化のため著作権者等が自ら保有する著作物とプログラム登録がされている著作物が同一であることの証明を請求できるようにするなどの改正

     ※ ⑥のみ、施行日未定

  このうち特に重要なのは①③ですので、以下もう少し詳しくご説明いたします。

(2)写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大

文化庁説明資料11より

 ポイントは以下の通りです。

  •  ・

    改正前著作権法のいわゆる写り込みの規定は、写真撮影・録音・録画をする際に、メインの被写体から分離困難な著作物については、利用できる(著作権侵害が生じない)とするものでした。
    この規定が、今回、スクリーンショットやインターネットによる生配信などを行う際の写り込みも幅広く認めるように改正されました。

  •  ・

    加えて、改正前の規定では、著作物の創作の場面でしか適用されない点や、「分離することが困難」という要件から、適用範囲が限られていたところ、これを大幅に緩和し、適用場面を拡張したものです。

(3)著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

文化庁説明資料12より

 ポイントは以下の通りです。

  •  ・

    改正前は、著作権者とライセンス契約を締結して著作物を利用するライセンシーは、著作権が譲渡された場合、著作権の譲受人などに対し、利用権を対抗できず、利用を継続できない状況でした。

  •  ・

    そこで、ライセンシーが安全して利用を継続できるよう、利用権を著作権の譲受人などに対応できる制度が導入されました。
    なお、対抗の為に登録などの手続きは不要です。

  •  ・

    この改正により、著作権の譲渡を受ける際に、ライセンス契約が存在しないことを確認することや、存在しないことの保証をさせることが重要になりますので、ご留意ください。

5 おわりに

 冒頭にも申し上げました通り、著作権法は改正が相次いでおり、頻繁に知識や契約書のアップデートが必要になります。
 当事務所でも、改正著作権法に対応したリーガルサービスを提供しておりますので、ご懸念等ございましたら、お気軽にご相談ください。

以上

  1. 法文上の定義は、「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」であり、内容は、著作権法第113条第2項第1号イ及びロ記載の通りですが、かなり複雑な記載になっています。簡単にいいますと、違法にアップロードされた漫画等へのリンクを集約したサイトやアプリのことです。
  2. 厳密には、リーチサイトを通じて海賊版サイトにアクセスし、海賊版サイトからダウンロードすることになります。
  3. 著作権法第113条第2項
  4. 著作権法第113条第2項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等
  5. https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_02.pdf
  6. 除外①の「軽微なもの」とは、例えば、著作物全体の分量から見てダウンロードされる分量がごく小さい場合や、画質が低くそれ自体では鑑賞に堪えないような場合が挙げられています。このほか、除外事由については注5記載の文化庁説明資料に想定例が記載されておりますので、ご興味ありましたらご確認ください。
  7. 先日も某著名漫画の編集者の方が、WEB配信の際に、このようなリーチサイトにアクセスしていた履歴を表示させてしまい、炎上するといった事象が生じたところです。
  8. 著作権法第30条の2
  9. 著作権法第42条第2項
  10. 10著作権法第63条の2
  11. 11https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_02.pdf
  12. 12https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/pdf/92359601_02.pdf