過去の登記相談Q&A

2020年05月01日

(第56回)[商業登記編]~コロナウィルスにより定時株主総会の開催延期をした場合の登記への影響~

司法書士大越一毅

~コロナウィルスにより定時株主総会の開催延期をした場合の登記への影響~

Q: 当社は、今般の新型コロナウィルスの影響により定時株主総会の開催延期を検討しています。
今年の定時株主総会が本来は取締役の改選期であり、取締役の再任決議・再任登記が必要ですが、定時株主総会を開催延期した場合には、登記手続に影響はありますでしょうか?

A: 1.定時株主総会を開催延期した場合の登記手続への影響(原則的な取扱)
 株式会社(以下「会社」といいます。)の場合、同じ人が取締役を継続する場合でも、任期満了のタイミングで、定時株主総会により再任決議をした上で、再任登記をする必要があります(再任登記の詳細は、登記相談Q&A第3回をご参照ください。)。
 また、多くの会社では、定款で、定時株主総会の議決権行使に関する基準日(定時株主総会で議決権を行使することができる株主と判断する日のこと)につき、事業年度末日と定め、かつ事業年度末日から3か月以内に定時株主総会を開催するよう定めています。基準日時点の株主が行使することができる権利は、当該基準日から3か月以内に行使するものに限られるためです(会社法124条2項)。
 例えば3月31日を事業年度末日とした(いわゆる「3月決算」の会社)場合、6月30日までに定時株主総会を開催する必要があります。
 しかし、定時株主総会を本来開催すべき時期である事業年度の末日から3か月以内に開催しなかった場合、登記実務上の原則的な取り扱いは、本来の定時株主総会開催期限に既存取締役が全員任期満了により退任し、実際に定時株主総会を開催して再任決議+就任承諾をした日に改めて就任するとの扱いです。
 例えば、3月決算の会社が6月30日までに定時株主総会を開催せず、7月31日に開催し、同総会で既存取締役の再任決議をした場合には、当該取締役は、登記簿に「6月30日退任」・「7月31日就任」と登記され、登記簿上の空白期間の無い再任の意味である「重任」とは登記されません。
 したがって、登記簿上は、退任日と就任日に空白期間ができ、再任ではないかのように登記されるため、登記簿の見栄えが非常に悪くなります。
 この点、会社法上は、上記のように空白期間がある場合でも、空白期間は権利義務取締役として、取締役としての権利義務を有していると扱われますので、大きな違いは生じないと思われます(会社法346条1項)。
 但し、建設業の許可のように、役員が一定期間在任していることが要件となっているケースでは、登記簿上の記載が「重任」となっていないと、別途の資料で証明が必要となり煩雑となることもあるようですから、注意が必要です。

2.新型コロナウィルスの影響による特別措置
 今般の新型コロナウィルスの影響により、本来の時期に定時株主総会の開催をせず、開催延期を検討している会社も出てきているようです。これは、やむを得ないことかと考えます。
 そのような場合にまで、上記1.の登記実務対応が徹底されてしまうと、本来は開催延期が妥当にも関わらず、登記簿の見栄え・許可取得又は更新への影響等も鑑み、開催延期の判断を決断できない会社もあるのではと思われます(老舗企業・上場企業であるほど、登記簿の見栄えに拘る会社も多い印象です。)。
 したがって、法務省は、2020年4月13日付で、新型コロナウィルスの影響により定時株主総会の開催延期をした会社につき、その後合理的な期間内に定時株主総会を開催して取締役再任決議をした場合には、空白期間無く再任された場合の登記簿の表記である「重任」で登記することを認めるQ&Aを以下のとおり公表しました。
 法務省のサイト:http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00076.html

 具体的には、同サイトにもあるように、3月決算の会社が6月に定時株主総会を開催できず、7月に開催した場合、1.の場合と異なり、「7月●日重任」で登記可能となります(日付は実際に開催した定時株主総会日となります。)。
 なお、実際に開催延期をした場合、開催延期の妥当性を証する書面の添付が登記申請の際に必要となるかどうか・具体的にいつまでの開催延期であれば「重任」扱いとなるのかについては、詳細が明らかとなっておりませんので、判明次第、本コラムでも解説をする予定です。
3.当事務所に依頼することのメリット
 今回のような特別措置の対応方法など、市販の書籍等では明確な記載のない実務対応が商業登記実務には多々あり、それらを全て把握し、かつ最新情報を速やかに入手することは容易ではなく、経験も必要です。
 当方であれば、多数の企業から商業登記手続の依頼・相談を受けているという実績があるため、商業登記に関する最新の実務に基づいた適切なアドバイスが可能です。
 本事例に限らず、会社に関する登記事項の変更を検討する方がいましたら、お気軽にご相談ください。
 司法書士報酬については、当事務所のHPをご参照ください。
以上
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