過去の登記相談Q&A

2017年11月01日

(第46回)[商業登記編]~増資よりも時間のかかる減資~

司法書士 大越一毅

~増資よりも時間のかかる減資~

Q:当社は、ベンチャーキャピタルから何度か資金調達を実施し、今回の資金調達で資本金が5億円を超えました。
 資本金が5億円以上となった場合、大会社となり会計監査人の設置等が必要になるため、それを避けるために減資をしたいと考えています。
 当社の決算期は、3月ですが、いつまでに減資をする必要がありますでしょうか?
 また、減資をするためには、どのような対応が必要でしょうか。

A:1.大会社と減資とは?
 株式会社(以下「会社」といいます。)の資本金の額は、貸借対照表上資本の部に記載し、かつ登記簿上公示されています。当該資本金の額を減少することを一般的に減資(会社法447条)といいます。
 また、会社の資本金額が5億円以上となった場合、会社法上の大会社となり、監査法人又は公認会計士を会計監査人として選任する必要があります(会社法2条6号)。
 大会社となるかどうかは、一度でも増資等により資本金額が5億円となったからではなく、最終事業年度に係る貸借対照表で資本金額が5億円となった場合に限ります。
 したがって、設例のように、期中に5億円以上となった場合でも、同じ事業年度中に減資をして資本金額を5億円未満とすれば、大会社には該当しないことになり、会計監査人の選任等は不要です。設例の場合であれば、3月決算なので、3月31日までに効力が発生する減資をすれば、大会社にはなりません(登記申請は、減資の効力発生日から2週間以内に申請すれば足りますので、4月の登記申請となっても差し支えありません。)。

 従来、減資の際には債権者保護手続が必要となる・取引先等との契約書上減資をする場合には事前に通知又は承諾がいる等、対外的に減資の旨を告知しなければならいこと、又一般的には減資のイメージがあまり良くないことから、剰余金を増やして株主に配当を実施する若しくは税務上の必要性がある場合を除いて、減資が行われるケースは多くありませんでした。これら以外に行われるケースとしては、事業再生の一環として、100%減資を行うケースくらいでした。

 しかし、昨今では、ベンチャーキャピタル等からの資金調達が盛んになり、未上場の会社でも資本金額が5億円以上となるケースが増加してきたため、会社法上の大会社を避ける目的で、減資を行うケースが増えてきました。
 会計監査人を置くこととなりますと、会社法上の会計監査人監査が必要となり、監査法人に支払う報酬が増加する等の不利益があるからです。
 資本金額が5億円以上となったのが、上場に近い時期(直前期の後半等)であれば、減資をせずにそのまま大会社に移行するケースも多いでしょうが、昨今は、上場時期が流動的な段階から、5億円以上となる会社が増えてきたため、設例のように減資をするケースが増加してきた印象です。

2.減資の手続
減資に必要となる具体的な手続は以下のとおりです(会社法447条、449条)。

<減資手続>
①株主総会の特別決議
②債権者に対する官報公告
(減資の内容・一定の期間内異議を述べられる旨・最終の貸借対照表の開示場所)
③会社が把握している債権者に対する個別催告通知(公告と通知内容は同一)
④異議を述べた債権者に対する対応(弁済等)
⑤減資の効力発生
⑥登記申請

 上記②~④が債権者保護手続です。会社は、減資をする旨の公告及び個別催告通知をしてから1ヶ月間、債権者に対して異議を述べる機会を与える必要があります。
 そして、減資は、原則として会社が定めた効力発生日に効力が生じますが、債権者保護手続が終了していない場合には、その効力が生じません。
 また、公告を官報に掲載する場合、申込から掲載までに15日間(決算公告を毎年行っている会社の場合には最短で1週間。土日祝日を挟む場合は、掲載までの期間延びることがあります。)必要です。
 したがって、準備期間等も鑑みると、最短でも手続開始から減資の効力発生までに2ヶ月間は必要です。
 そのため、設例の場合であれば、遅くとも年明け1月の早い段階で、手続に着手しておく必要があります。
 このように、減資は、最短1~2週間程度で実行可能となる増資(募集株式発行)よりも、非常に時間がかかります。
 当方の経験則上、増資と減資のスケジュール感をほぼ同じに考え、減資の相談があったときには、既に決算期末までに減資の実行が法律上不可能となっているケースが少なくありませんので、スケジュールにはご注意ください。

 なお、会社債権者も含め関係当事者全員が同意している又は会社債権者が存在しなかったとしても、官報公告を省略することはできないため、手続の期間短縮をすることもできません。
 他方で、③個別催告通知は、公告する方法を電子公告にした場合、電子公告と官報公告の双方を実施することによって、省略することが可能(電子公告の詳細は、登記相談Q&A第7回を参照ください。)です。但し、公告方法を電子公告としてしまうと、決算情報を自社ホームページで詳細に公表する必要が出てくるため、上場前の会社には、あまり現実的ではなく、お勧めしません。


3.当事務所に依頼することのメリット
 減資は、債権者保護手続のスケジュール確保等、会社法上の手続を網羅したスケジューリングが非常に重要であり、また官報公告の手配等、法務担当者であっても未経験である作業が必要となるため、商業登記手続に慣れていないと、対応に苦慮するケースが少ないかと思います。
 また、株主総会の実施にあたって、招集通知の対応等、弁護士に依頼・相談すべき事項もあります。
 当事務所であれば、弁護士と司法書士がそれぞれの専門分野の観点から、ワンストップサービスを実践しているというメリットがあります。
 本事例に限らず、減資を検討する企業がありましたら、お気軽にご相談ください。
 弁護士報酬・司法書士報酬については、当事務所のHPをご参照ください。
以 上
PAGE TOP