過去の登記相談Q&A

2016年05月01日

(第40回)[商業登記編]~代表取締役の予選決議の注意点と辞任する場合の登記書類の改正~

司法書士 大越一毅

~代表取締役の予選決議の注意点と辞任する場合の登記書類の改正~

Q:当社は上場企業ですが、100%子会社(取締役会設置会社)を複数社所有しています。
 100%子会社の代表取締役は当社取締役を兼任していますが、他の取締役は各地の事業部所属の使用人兼務取締役です。
 そのため、取締役会を当社本社で頻繁に行うことが難しく、任期満了再任による代表取締役選定のための取締役会は、定時株主総会後ではなく、定時株主総会を招集決定するための取締役会で、事前に予選しておきたく存じます。
 そのようなことは可能でしょうか?
 他方で、代表取締役を辞任した場合の変更登記の必要書類に改正があったと聞きましたが、具体的にはどのような改正があったのでしょうか。

A:

 1.代表取締役の改選手続

 取締役が任期満了した場合、同じ人が就任し続ける場合であっても、定時株主総会での再任決議+再任登記申請が必要です(取締役の再任手続の詳細は、登記相談Q&A第3回をご参照ください。)。
 そして、代表取締役についても、同じ人が就任し続ける場合であっても、取締役の任期が満了するタイミングで、取締役会にて再任決議+再任登記申請が必要です。
 原則として、定時株主総会直後(同日)に、取締役会を開催し、代表取締役の再任決議を行います。
 一般的には、同じ取締役会で、株主総会・取締役会における代表取締役が事故等で議長をできない場合の代行者の順序や取締役の報酬決議を行うケースが多いと考えます。
 上場企業など、外部株主の多い会社であれば、特段の理由が無い限り、定時株主総会には、取締役の全員が出席しますので、そのタイミングで取締役会を行うことは会社的にもスケジュール調整がし易いなどのメリットがあるため、定時株主総会直後に取締役会を開催することは難しくないと考えます。

 2.代表取締役を予選することの可否

 他方で、本事例のように、上場企業の子会社の場合、取締役が上場企業の役員と兼務していないケースも多々あり、また海外や地方などに在住しているため、子会社の定時株主総会に出席しない、又は定時株主総会を書面決議で行うというケースも少なくありません。
 したがって、定時株主総会直後に取締役会を開催することがスケジュール的に困難な場合もあります。
 子会社の定時株主総会の日時・場所は、事実上親会社の意向・都合(子会社の本店所在地ではなく、親会社の本店所在地で子会社の定時株主総会も行うなど)で決定することが多いためです。
 取締役会も書面決議で行うという方法もありますが、その場合には、取締役会を実際には開催していないので、再任者であっても、個別の就任承諾書を法務局に提出する必要があり、それも迂遠で避けたいという会社も少なくありません。
 そこで、その場合の対処法として相談をよく受けるのが、定時株主総会を招集決定する取締役会(定時株主総会の1週間~2週間前頃に開催)にて、定時株主総会で取締役の再任決議が承認可決されることを条件に、予め代表取締役の選定決議を行っておくことの可否です。このような決議を、一般的には代表取締役の予選決議といいます。
 代表取締役の予選決議につき、会社法上は規制がありませんし、本事例のように実務上の要請も少なくありませんから、何ら問題無く認められそうにも思えます。
 しかし、現行登記実務上は、原則として定時株主総会をまたぐ代表取締役の予選決議による再任登記は、認められていませんので、ご注意ください。
 これは、代表取締役につき、現任取締役の意思が反映された取締役会で選定すべきとの考え方が、登記実務で徹底されているためと解されています。
 つまり、定時株主総会前後で、取締役のメンバーが変わることも多々あると思いますが、そのようなケースにおいて代表取締役を定時株主総会前に予選してしまうと、定時株主総会で新たに選任された取締役の意思が反映されずに、定時株主総会以降の代表取締役を決めることが可能になってしまうので、好ましくないとされており、代表取締役の予選が認められていません。

 一方で、定時株主総会で現任取締役が全員再任するようなケースであれば、定時株主総会前後で、取締役のメンバーが同じであり、取締役全員の意思を反映して取締役会を行ったことになるので、代表取締役の予選が認められています(昭和41年1月20日付民事甲第271号民事局長回答)。
 現在の登記実務上、定時株主総会をまたぐ代表取締役の予選が認められるケースは、これに限られていますので、ご注意ください。
 とはいえ、代表取締役の予選は、より柔軟な方法で活用したいとの実務上の要請が非常に強いので、今後、予選が認められるケースが拡充される可能性もあります。
 たとえば、取締役の過半数が定時株主総会前後で同じメンバーなのであれば、取締役会としての決議要件は満たしていますので、一部の取締役に変更があったとしても代表取締役の予選を認めてもいいのではと当方は思います。今後、実務の運用に変更があった場合には、本ホームページで紹介していきたいと思います。

 3.代表取締役が辞任する場合における辞任届の改正~実印が必要に~

 平成27年2月27日の商業登記規則の改正に伴い、役員新任の場合の添付書類の変更(詳細は、登記相談Q&A第35回をご参照ください。)と同様に、代表取締役が辞任する場合の辞任届の要件が改正されました。
 従前は、辞任届に捺印する印鑑は認印で足りましたが、現在では、法務局に会社代表印の届出をしている代表取締役が辞任する場合、当該辞任届に捺印する印鑑は、以下のいずれかである必要がありますので、ご注意ください。
 これは、代表取締役という会社にとって最重要の役員が、第三者が悪意をもって三文判のみ捺印した辞任届で退任登記させられてしまうことを未然に防ぐことが目的とされています。

<辞任届に捺印すべき印鑑>
①代表取締役個人の実印

 *印鑑証明書も必要です。
②法務局に届出した会社代表印

 4.当事務所に依頼することのメリット

 役員変更に関しては、比較的シンプルな内容の登記であるため、司法書士に依頼せず、自社の総務担当者等が申請対応しているケースも少なくないかと思います。
 しかし、代表取締役の予選など、登記実務上の細かなポイントが多々あり、特に役員の入れ替えがあるケースでは要注意です。
 さらには、役員の改選期においては、単に登記手続を行うだけでなく、外部株主が多い会社の場合、株主総会の準備など、弁護士に依頼・相談すべき事項もあります。
 当事務所であれば、弁護士と司法書士がそれぞれの専門分野の観点から、ワンストップサービスを実践しているというメリットがあります。
 本事例に限らず、株主総会の開催を検討する企業がありましたら、お気軽にご相談ください。弁護士報酬・司法書士報酬については、当事務所のHPをご参照ください。

以 上
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